駿河國富士郡（富士市、富士宮市）の神社仏閣めぐり

新豊院（富士市岩淵）の観音画像は大正１３年、昭和天皇ご成婚を祝して製作された。地元観音講員３００人と小学校女生徒１００人が、本堂で観音経を読経しながら３日３晩かけて白布１８０反を縫い、これに地元出身大村西崖画伯が４日半かけて揮毫した。かつては１０ｋｍ以上離れた田子浦からも遠望できたという。

くだって平成１１年、開創８００年を記念し２４０反（４５ｍ×１８ｍ）に複製された。

描かれているのは１面２臂の聖観音立像。高さ４５ｍの布いっぱいに描かれており、間近で拝観するとその大きさに圧倒される。胴や頭部は肉厚で迫力ある一方、腕は異様に細くはかなげ。左手に蓮華をもち、右手人差し指で花弁を摘んでいる。頭部は丸く、頭髪部正面には化仏。ひたいはほぼなく、弓型眉とまぶたがやけに大きく描かれ、その下に伏し目と団子鼻、おちょぼ口。愛嬌のあるご尊顔である。

観音画像は毎年３月第３土・日曜日の大観音大祭のとき、本堂裏手斜面に掲げられる。ご利益は縁結び・開運・子宝・厄除けなど。多くの善男善女でにぎわい、旧富士川町有数の縁日となっている。

像高１３４.５ｃｍの桧材一本造りで、表面は漆箔仕上げ。細身ながら、ふくよかな面立ちは風格を感じさせる。肉付きの良いほほの上で、目をやさしく開いた穏やかな表情。両腕は肘で屈し、胸元で左手をやわらかく握り（水瓶は欠損）、左手は親指と人差し指を軽くタッチ。条帛や裳は身体に密着するように薄く、腰から下の天衣は欠損しており、総体的に軽やかな雰囲気。

この像は慈眼山増福寺（新豊院末／廃寺）の本尊だった。同寺のはっきりとした所在地は知らないが、新豊院と同じ字（会下）にあったらしいから、すぐそば、あるいは塔頭だったのかもしれない。開創は寛永４年（１６２７）、開山は新豊院３世脱州順怡で、江戸期は除地７畝歩。明治６年に廃寺となり、聖観音立像はこのとき新豊院に移されたようす。現在は３月大観音大祭や１０月三尊祭に開帳されている。

像高９２.４ｃｍの桧材寄木造りで、表面は泥下地の漆箔仕上げ。右手は施無畏印、左手は膝上（結跏趺坐）に載せ、薬壺は持たない。肉髻は青く彩色され、眉間に白毫があり、目は彫眼である。頭部が大きく、面立ちは肉厚でハリがあり、恰幅のいい雰囲気はどことなくハチマキをまいた長距離トラックの運転手のよう。

この像は吉野山光雲寺（新豊院末）の本尊だった。光雲寺は新豊院２世儀堂全威が岩淵字南吉野に開き、江戸期は除地８畝１２歩を所有。明治６年廃寺となり、薬師像はこのとき新豊院に移されたという。現在は、増福寺（新豊院末／廃寺）の本尊だった聖観音とともに観音堂でまつられ、３月大観音大祭や１０月三尊祭に開帳されている。