統計資料
表【A】は、神社を「信仰の系統別」に分類したもの。神社本庁全国の出典は、平成19年7月22日付の朝日新聞。神社本庁富士は『静岡県宗教法人名簿』をもとに管理人が分類。全国分社数の出典は『すぐわかる日本の神々』。
表【B】では、表【A】の「神社本庁包括富士」項を詳しくまとめた。
【A】 系統別 神社統計 |
順 |
系統 |
祭神 |
神社本庁 全国数・% |
神社本庁 富士数・% |
全国 分社数 |
1 | 八幡 | 応神天皇 |
7,817 | (9.9) |
65 | (22.5) |
25,000 |
2 | 伊勢 | 天照大神 |
4,425 | (5.6) |
9 | (3.1) |
18,000 |
3 | 天神 | 菅原道真 |
3,953 | (5.0) |
18 | (6.2) |
10,441 |
4 | 稲荷 | 宇迦之御魂神 |
2,970 | (3.7) |
23 | (8.0) |
32,000 |
5 | 熊野 | 熊野三神 |
2,693 | (3.4) |
7 | (2.4) |
3,078 |
6 | 諏訪 | 建御名方神 |
2,616 | (3.3) |
2 | (0.7) |
5,073 |
7 | 祇園 | 素盞鳴尊 |
2,299 | (2.9) |
4 | (1.4) |
5,938 |
8 | 白山 | 菊理姫神他 |
1,893 | (2.4) |
2 | (0.7) |
2,717 |
9 | 日吉 | 大山咋神 |
1,724 | (2.2) |
2 | (0.7) |
4,913 |
10 | 山神 | 大山祇神 |
1,571 | (2.0) |
46 | (15.9) |
1,0318 (三島含) |
11 | 春日 | 天児屋神 |
1,072 | (1.4) |
1 | (0.3) |
3,000 |
12 | 愛宕 | 火之迦具土神 |
872 | (1.1) |
3 | (1.0) |
1,600 (秋葉含) |
13 | 三島 大山祇 | 大山祇神他 |
704 | (0.9) |
1 | (0.3) |
1,0318 (山神含) |
14 | 鹿島 | 武甕槌神 |
604 | (0.8) |
0 | (0.0) |
- |
15 | 金比羅 | 大物主神 |
601 | (0.8) |
3 | (1.0) |
2,151 (出雲含) |
16 | 住吉 | 住吉三神 |
591 | (0.7) |
0 | (0.0) |
2,000 |
17 | 大歳 | 大歳神 |
548 | (0.7) |
0 | (0.0) |
- |
18 | 厳島 | 宗像三神 |
530 | (0.7) |
1 | (0.3) |
8,500 |
19 | 貴船 | 高龗神 |
463 | (0.6) |
2 | (0.7) |
- |
20 | 香取 | 経津主命 |
420 | (0.5) |
0 | (0.0) |
- |
21 | えびす | 蛭子命 |
408 | (0.5) |
1 | (0.3) |
- |
22 | 浅間 | 木花咲耶姫神 |
397 | (0.5) |
32 | (11.1) |
1,316 |
23 | 秋葉 | 火之迦具土神 |
362 | (0.5) |
0 | (0.0) |
1,600 (愛宕含) |
24 | 荒神 | 火之迦具土神他 |
317 | (0.4) |
1 | (0.3) |
- |
25 | 賀茂 | 賀茂別雷神他 |
277 | (0.3) |
0 | (0.0) |
- |
25 | 水神 | 弥都波能売神他 |
277 | (0.3) |
3 | (1.0) |
- |
上記計 |
40,404 | (50.9) |
226 | (78.2) |
|
その他 |
38,931 | (49.1) |
63 | (21.8) |
|
合計 |
79,335 | |
289 | |
|
出典・参考:朝日新聞(平成19年)、静岡県宗教法人名簿(平成6年)、すぐわかる日本の神々 |
【B】 富士地区 神社本庁包括神社 統計 |
系統 |
主な祭神 |
富士地区 数 (%) |
富士市 数 (%) |
富士宮 数 (%) |
八幡 |
応神天皇 |
65 | (22.5) |
21 | (11.9) |
44 | (39.3) |
山神 |
大山祇命 |
46 | (15.9) |
40 | (22.6) |
6 | (5.4) |
浅間・富士 |
木花開耶姫命 大山祇命 |
30 2 | (10.4) (0.7) |
17 1 | (9.6) (0.6) |
13 1 | (11.6) (0.9) |
稲荷 |
宇迦之御魂神 |
23 | (8.0) |
14 | (7.9) |
9 | (8.0) |
天神 |
菅原道真 |
18 | (6.2) |
11 | (6.2) |
7 | (6.3) |
愛鷹 |
瓊々杵尊 |
12 | (4.2) |
10 | (5.6) |
2 | (1.8) |
伊勢 |
天照大神 |
9 | (3.1) |
7 | (4.0) |
2 | (1.8) |
熊野 |
熊野三神 |
7 | (2.4) |
5 | (2.8) |
2 | (1.8) |
龍神
水神
|
高龗神 八大龍王 高龗神 弥都波能売神 |
2 1 1 2 | (0.7) (0.3) (0.3) (0.7) |
2 1 1 2 | (1.1) (0.6) (0.6) (1.1) |
0 0 0 0 | (0.0) (0.0) (0.0) (0.0) |
祇園 |
素盞嗚命 |
4 | (1.4) |
3 | (1.7) |
1 | (0.9) |
愛宕 |
火之迦具土神 |
3 | (1.0) |
3 | (1.7) |
0 | (0.0) |
金毘羅 |
大物主神 崇徳天皇 |
3 | (1.0) |
2 | (1.1) |
1 | (0.9) |
出雲 |
大国主命 |
3 | (1.0) |
2 | (1.1) |
1 | (0.9) |
第六天 |
高皇産霊神 伊邪那岐神 |
3 | (1.0) |
1 | (0.6) |
2 | (1.8) |
猿田彦・白鬚 |
猿田彦大神 |
3 | (1.0) |
2 | (1.1) |
1 | (0.9) |
数社 合祀 |
まちまち |
9 | (3.1) |
4 | (2.3) |
5 | (4.5) |
2社 【富士2社】 諏訪 八王子 木元 【富士1社・富士宮1社】 悪王子 日吉 白山 社宮司 【富士宮2社】 貴船 金山 |
18 | (6.2) |
10 | (5.6) |
8 | (7.1) |
1社 【富士】 厳島 大山祇 飯綱 春日 日向山(妙見) 荒神 八面 番神 六王子 十王子 木之宮 阿字 玉渡 見留目 和光明 天白 風之宮 米之宮 【富士宮】 蛭子 倭文 東照 若獅子 神力 石之宮 三宮 |
25 | (8.7) |
18 | (10.2) |
7 | (6.3) |
合計 |
- |
289 | |
177 | |
112 | |
※ 『静岡県宗教法人名簿(平成6年3月)』の神社本庁包括社は、富士市179社、富士宮市・芝川町123社。そのうち、重複3社を除き(富士2社、富士宮1社)、富士市177社、富士宮市・芝川町112社で計算 |
富士地区における神社の特徴
全国順位 | 富士地区順位 |
1 | 八幡系 | (9.9%) | 1 | 八幡系 | (22.5%) |
2 | 伊勢系 | (5.6%) | 2 | 山神系 | (15.9%) |
3 | 天神系 | (5.0%) | 3 | 浅間系 | (11.1%) |
4 | 稲荷系 | (3.7%) | 4 | 稲荷系 | (8.0%) |
5 | 熊野系 | (3.4%) | 5 | 天神系 | (6.2%) |
6 | 諏訪系 | (3.3%) | 6 | 愛鷹系 | (4.2%) |
7 | 祇園系 | (2.9%) | 7 | 伊勢系 | (3.1%) |
8 | 白山系 | (2.4%) | 8 | 熊野系 | (2.4%) |
全国トップ5の八幡、伊勢、天神、稲荷、熊野は富士地区でも人気が高く、いずれもトップ10に入っている。なかでも八幡は、富士地区全体で22.5%、富士宮市では39.3%と圧倒的シェア。郷土に多い日蓮系諸宗派の寺院が、護法神として積極的に祀った結果だろう。
一方、全国6位諏訪、同8位白山、同9位日吉は2社ずつと少なく、全国11位春日、同13位三島・大山祇は、それぞれ1社のみ。全国14位鹿島、16位住吉、17位大歳、20位香取、23位秋葉、25位賀茂は0社だった。
かわって上位に顔を出したのは、山神、浅間、愛鷹。山神は「山の神」を崇める信仰、浅間は「霊峰富士」を崇める富士山信仰、愛鷹は「愛鷹連山」を崇める愛鷹山信仰と、いずれも山に関する信仰。北に富士山、東に愛鷹連山がそびえる富士地域の環境をよく映している。
全国10位山神は、富士地区2位の46社(15.9%)。うち富士市に40社あり、市内シェア22.6%で断トツの1位。全国22位浅間は、総本宮・浅間大社のお膝元だけあって32社(11.1%)で3位。域内に万遍なく浸透している。富士・駿東地域のローカル信仰である愛鷹は12社(4.2%)あり、伊勢や熊野を抑えて6位だった。
八幡信仰
総本宮は宇佐神宮(大分県)。祭神は応神天皇ほか。神仏習合にともない九州から中央へ進出。京都に勧請された石清水八幡宮は、王城鎮護の神として崇敬された。その後、清和源氏の氏神となったため、鎌倉期に御家人の守護神として全国展開。富士地区の場合、富士宮・芝川は日蓮系寺院が積極的に勧請、富士市は新田開発が進んだ17世紀以降に多い。神使は鳩、神紋は三巴ほか。
山神信仰
全国的な民間信仰。猟師や林業従事者から職業安全の神として信仰された。また、山の神は春になると里へおりて田の神となり、刈り入れが終わるころ山へ帰るとされ、農耕神としても信仰された。富士地区では、大山阿夫利神社(神奈川県)、神場山神社(御殿場市)などから勧請された社もあるが、ほとんどは民間信仰の山神を祭祀。明治以降、祭神に大山祇命をあてたと考えられている。
浅間信仰
総本宮は富士山本宮浅間大社(富士宮市)。祭神は浅間大神(木花之佐久夜毘売命)。霊峰富士を神格化した自然・山岳信仰で、富士山8合目以上は浅間大社奥宮の神域。富士山噴火を鎮めるために創祀され、「浅間」とは火山の意。主要神社は静岡・山梨両県に集中しているが、江戸期に大流行した富士講の影響で関東に多く分社された。神使は猪や猿、神木は桜、神紋は棕櫚葉や桜。
稲荷信仰
総本社は伏見稲荷大社(京都府)。祭神は宇迦之御魂神。一説に社名の稲荷は「稲生り」から転かしたとされ、穀物・農耕神、商工業の神として信仰されている。当初は渡来氏族である秦氏の氏神だったが、平安初期、東寺の守護神になったことで真言密教と結びつき、同宗の普及にともない全国各地へ流布した。小祠や屋敷神を含めれば無数の分社がある。神使は狐、神紋は抱き稲や宝珠。
天神信仰
総本宮は北野天満宮(京都府)、太宰府天満宮(福岡県)。菅原道真を天満天神として祀り、学問上達・受験合格祈願の神として信仰されている。菅原道真の怨霊を鎮める御霊信仰が発端だが、次第に怨霊としての脅威が薄れると、菅原道真が優れた学者・歌人であったことから学芸・文筆の神として祀られた。江戸期には寺子屋の神として信仰。神使は牛、神木は梅、神紋は梅鉢系。
愛鷹信仰
根本社は富士山南東麓にそびえる愛鷹山(標高1,188m)の山頂に鎮座している愛鷹神社。愛鷹連峰周辺の富士・駿東地域に分布するローカル山岳信仰で、南麓に密集。本社は『惣国風土記』を引いて建御名方神を主祭神にあてているが、富士山の祭神である木花之佐久夜毘売命の夫神・瓊瓊杵尊、あるいはその御子・彦火火出見尊が多い。富士地区は瓊瓊杵尊を祭神としている。
伊勢信仰
総本社は皇大神宮(三重県)。太陽神の天照大神を祀ることから、農耕神として信仰されている。当初は皇室の氏神であったが、権力衰微にともない、民間にも開かれた。とくに中世以降、御師の布教活動によって全国に広められ、各地に伊勢講が組織された。社寺参拝が盛んになった江戸期には、庶民のあいだに伊勢神宮への参拝旅行「伊勢参り(お蔭参り)」が流行した。神使は鶏。
熊野信仰
総本社は和歌山県の熊野三山(熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社)。祭神は熊野三所権現(家都御子神、熊野速玉男神、熊野夫須美神)。海・山・滝などの自然信仰に始まり、仏教の普及にともない山岳修験の一大霊場に発展。平安期には上皇の御幸が盛んに行われ、のちに武士・庶民にも広がりをみせた。また、御師や比丘尼によって熊野信仰は全国流布。神使は烏。
富士地区 主要神社の系統
明治期の近代社格において郷社以上だった神社は6社鎮座している。
浅間信仰の総本宮・浅間大社のお膝元に相応しく、日吉神社を除く5社が浅間系。また、日吉神社も浅間大社末社だった。
なお、系統としては、米之宮浅間神社と日吉神社は古くから浅間大社が管掌。村山浅間神社は村山修験(富士修験)の村山興法寺、富知六所浅間神社、瀧川神社は今泉東泉院が管掌した。