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三股淵の生けにえ伝説

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田子の浦港(静岡県富士市)の奥、沼川と和田川(生贄川)が合流する場所を「三股淵」といった。竜蛇が住まい、少女を生けにえとしてささげていた、という伝説がある。「生贄淵」とも呼ばれた。

三股淵と人身御供

こんにち伝えられている三股淵の生けにえ伝説は、旅の巫女たちが三股淵に住まう大蛇(竜蛇)の人身御供に選ばれた、という話。資料ごと結末や登場人物に差異はあるが、おおむねバッドエンドとハッピーエンドのふたつに大別できる。

  1. 『田子の古道』の場合
  2. 江戸後期の諸地誌の場合
  3. 『駿河志料』『駿河國新風土記』の考察
『田子の古道』の場合

『田子の古道』は18世紀前半の地誌で、東海道吉原宿の変遷などについて詳しく著している。このなかで三股淵の生けにえ伝説に触れており、概略次のような悲話を紹介している。

諸川が合流する三股は、ふかく、ひろい淵である。悪霊(毒蛇)が住むことから毎年、人身御供を用意して祭祀していた。

あるとき、関東の神子7人が上京の途次、里人に止められた。その年の人身御供に選ばれたのだ。くじを引かされ、年若い「おあじ」が"当り"を引いた。

くじに外れた6人は関東へ戻ることとなり、柏原村まで引き返した。しかし、あおじのことを思うと、自分たちだけ生き長らえることはできず、みなで浮島沼へ身を投げた。土地の者は、彼女らの亡骸を引き上げ、1か所に埋葬した。

ところが翌日、毒蛇は富士浅間の御神力で鎮まった。災いを免れたおあじは、解放されるや6人を追い、悲報を知る。おあじの嘆きはふかく、やがて沼に身を投げてしまった。

以降、毒蛇は富士浅間の御神力で鎮まり、生贄の儀は止んだ。人々は、神子たちのおかげと感謝し、彼女たちを土地の氏神として祀った。柏原新田の六王子神社である。

六王子神社
六王子神社(富士市中柏原新田172)

現在、毒蛇の鱗が保寿寺の什物となっている。この寺は生贄の祭りを修するため、8石3斗の年貢が免除され、毎年6月28日に三股で川施餓鬼を行なっている。

保寿寺の芝源

上記(『田子の古道』)の伝説では、毒蛇を鎮めたのは「富士浅間の御神力」だが、一方で「保寿寺の僧が修伏した」という伝説もある。天正15年(1587)6月28日、保寿寺2世芝源が徳川家康の命により毒蛇を修伏したという話で、このとき毒蛇が残していった鱗が、前述の什物である。

芝源がからむ伝説の詳細は富士市公式ホームページでも見られるので、そちらを参照いただきたい。(

保寿寺
富士山保寿寺(富士市伝法1661)
江戸後期の諸地誌の場合

もうひとつの系統は、江戸後期の地誌『駿河記』『駿河国新風土記』『駿河志料』などが載せている話。中ほどまで『田子の古道』と同じだが、こちらは犠牲者がでないハッピーエンドとなっている。

沼川、和田川が合流するところを三股という。流れが三股になっていることが地名由来だ。数尋の淵となり、大蛇が住む、と言い伝えられる。生贄淵ともいう。

一説よると、むかし三股淵に大蛇が住み、毎年生けにえをささげる慣習があった。ある年、下総国下河邊庄の巫女6人が官職のため、侍女阿字を伴い上京していた。当地にさしかかったとき、巫女らは里人に捕らえられた。生けにえに選ばれたのだ。

阿字はこの非道をなげき、6人を救うべく動く。里人に生けにえ執行までしばらく猶予をもらい、上京して子細を奏聞した。官はこれを哀れみ、雛形を身代わりに用いて祭祀するよう示した。阿字は急ぎ三股淵へもどり、教えられたように祭祀し、巫女たちは神楽を奏上した。

以後、この形式が慣例となり、生けにえの儀は止んだ。里人は、彼女らの徳を貴び、巫女6人を六王子神社、阿字を阿字神社に祀った。

阿字神社
阿字神社里宮(富士市鈴川町12-35)
『駿河国新風土記』『駿河志料』による考察

これら伝説に関し、『駿河国新風土記』『駿河志料』はおおむね次のように考察している。

『駿河国新風土記』

毎年6月28日、保寿寺の衆僧がきて施餓鬼を修する。同寺の源禅師という僧が、三股淵の蛇を降伏させた遺法という。三股淵で修経し、そのあと松岡水神社で誦経して寺に帰る。

しかし、「竜蛇降伏の遺法なり」は付会の説で、その実は水祭である。保寿寺はもと真言宗であり、真言は両部習合であるから神祭も行なう。富士川の水神を祭った遺法である。阿字神社の祭神は詳らかでないが、水徳の神である。真言は「阿字」を万物の根源と考えて重視していることから、おそらく保寿寺の僧が真言密教の法を修した神祠ゆえ、阿字と号するのだろう。

※以上、現代文に直して編集

(補足情報:浅間大社は、松岡水神社隣の富士川で川原祓を行っている。また浅間大社別当の寶幢院も真言宗だった)

『駿河志料』

生贄は、稚贄屯倉の遺称に、謡曲「池贄」をこじつけたものである。六皇子社、阿字神、生贄淵の伝説は、近世の里人の説だけに信じがたい。近世、竜女成仏の経説に基づき、某寺の僧が生贄を止めた、巫女が止めた、などの伝説もあるが、甚だしいこじつけである。

三股淵は、富士浅間の御贄の鯉鮒類が棲息する淵である。古くは大淵だったと思われ、周辺の田の字を、今も贄淵と称する。贄は、神への備奉や天子の供御に奉るものを指し、魚貝類を称する。

※以上、現代文に直して編集
富士浅間

富士浅間は、霊峰富士の神のこと。ここでは富士山本宮浅間大社(富士宮市)を指すと思われる。同社は江戸時代、大祭に先立ち大宮司ら主要神職が三股淵そばの鈴川の海岸で濱下り(禊)を行い、次いで富士塚と阿字神社を参拝していた。

川原祓
現在「濱下り」はなくなり、松岡水神社隣の富士川で川原祓を行っている

また『駿河志料』『駿河国新風土記』は、六王子神社を『駿河国神名帳』に列する「正三位浅間第六御子明神」と考え、阿字神社も「浅間御子明神」の1柱ではないか、と考察している。

富士山本宮浅間大社と三股淵・阿字神社・六王子神社には、浅からぬ繋がりがあったようだ。

参考文献 田子の古道、駿河記、駿河国新風土記、駿河志料、浅間神社の歴史、ふるさとの昔話
(フォト最終撮影日:平成21年6月20日)
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