別所の郡石
別所八幡宮(富士宮市安居山)そばの小高い場所に、郡石(こおりいし)とよばれる岩がある。たかだかとした緑樹の日陰に大岩がどっかりと鎮座。隣には稲荷の小祠も祀られている。
富士三石の一
古くから当地にあったらしく、江戸後期の『駿河記』に「別荘八幡祠の右の方百姓持の山の内にあり。富士郡の形なる岩なり。長九尺許。また祠の左に石室あり」、『駿河志料』には「祠の右土人の持山にあり、長九尺許、本郡の形に似たる故に然称す」と載っている。
下って明治中期の『皇國地誌』では、安居山村から「字上別所にあり富士三石の一なり本来は氷石と云ふ」と報告され、昭和初期の『大宮町誌』も「安居山字別所にあり、富士郡三石の一なり、駿河記云富士郡ノ形ナル岩也、長九尺ばかり云々」と掲載。郡石を「富士三石」のひとつとして紹介している。
(江戸期の諸地誌は「富士三石」を伝法の氷石、原田の鏡石、今宮の壷石に比定)
名称由来は、先に触れたように「富士郡の形に似ている」ことらしいが、はたしてどの角度からみればそうなるのか、率直なところ分からなかった。巨大なぼた餅に見えてしまい・・・。( ̄▽ ̄;)
また地元の言い伝えによれば、建久4年(1193)富士の巻狩りのさい、源頼朝が別所にあった信定の館を訪れ、庭石に腰かけて信定の流鏑馬を見物した、といわれる。そのとき頼朝が腰かけた石がこれだとか。よってまたの名を「腰かけ石」。
郡石からの眺望
参考文献 由来板、駿河記、修訂駿河国新風土記、駿河志料、皇國地誌、大宮町誌、富士宮市歩く博物館、日本歴史地名体系、角川日本地名大辞典
(フォト最終撮影日:平成23年4月29日)